数年前まで、社台グループの運動会と皮肉交じりにいわれていた日本の中央競馬。しかし、ここ数年はノーザンファームの運動会になり、ノーザンファーム生産馬がG1レースの上位を独占することが増えてきた。なぜ社台グループの中から、ノーザンファーム生産馬ばかりが勝つようになったのか? データを中心に、その強さの秘密をひも解いていく。
近年圧倒的なノーザンファーム生産馬
過去10年の生産者別、G1勝ち馬は?
2010年から2019年までの、G1勝ち馬の生産者を表にまとめた。全213レースが行われ、ノーザンファームが93勝で圧倒的1位。2位は社台ファームで28勝、3位は社台コーポレーション白老ファームが15勝と続き、社台グループが上位を独占している。追分ファームの3勝もあわせて、実に全226レース中139勝と62%を社台グループ生産馬が勝っている。
ところがここ数年は、社台グループの中でもノーザンファームの独占状態になりつつある。2018年は全24レース中16レースがノーザンファームが勝ち、2019年も24レース中19レースがノーザンファームが勝利している。ここ2年で全48レース中35勝と72%がノーザンファーム生産馬となっている。
【上の表のおもな生産牧場の正式名称】
「NF」ノーザンファーム、「社台」社台ファーム、「白老」社台コーポレーション白老ファーム、「ヤナ」ヤナガワ牧場、「ノー」ノースヒルズマネジメント&ノースヒルズ、「ケイ」ケイアイファーム、「下河」下河辺牧場、「追分」追分ファーム、「ダー」ダーレー・ジャパン
後半成績を伸ばしたのはノーザンファームだけ
過去10年を2つに分ける
過去10年の生産者別G1勝利数を、前半と後半に分けたのが下の図だ。ノーザンファームは前半30勝に対して、後半は63勝と大きく勝ち星を伸ばした。同じ社台グループの社台ファームは前半19勝だったが、後半は9勝に止まった。社台コーポレーション白老ファームも11勝から4勝と伸び悩んでいる。社台グループ以外の牧場も、後半は勝ち星を減らしている。唯一、後半に勝ち星を大きく伸ばしたのはヤナガワ牧場だが、これはキタサンブラックがG1を7勝したところが大きい。最近10年をざっくり分けて考えても、ノーザンファームの独占状態に移行しているといえる。
ノーザンファームはどんなG1を重視しているのか?
ダートと芝のスプリントは狙っていない!?
さて、圧倒的な成績を収めているノーザンファームのG1での傾向はどうだろうか? G1レースをカテゴリごとに分類し、ノーザンファームの勝ち鞍を表したのが下の表だ。ここでは、はっきりとした傾向が現れた。芝のスプリントG1は2レースあるが、ひとつも勝っていない。また、ダートも2レースでわずかに3勝だ。ノーザンファームはダートと芝短距離に強い馬を作るつもりはないようだ。さらに、牡馬が出走可能な古馬のマイルと、3000m以上の長距離もあまり勝っていない。つまり、牡馬は2000~2400mのG1を勝つことを目的にしているといえる。一方、牝馬はまんべんなく勝利している。2歳から牝馬限定G1を確実にモノにしているが、エリザベス女王杯だけは4勝とやや物足りない。オークスは6勝しているが、このレースはスローペースになるので、長距離適性はあまり必要とされない。結論としては、牝馬はマイル~2000mがターゲットにしているといえる。